母の手作りワンピース ~自慢の一着~

今週のお題「自慢の一着」

 

こんにちは。

 

私の自慢の一着、それは母に作ってもらったワンピースです。

胸に刺繍のある姉とおそろいのベルベット素材の小さな水玉の

ワンピース。

 

当時、小学校低学年だった私は、姉と一緒にオルガン教室に

通っていました。

特にオルガンが好きだったわけではありません。

オルガン教室の先生がレッスンが終わるとお菓子をくれました。

それが目当てで、毎週、毎週、姉と一緒にオルガン教室に通っ

ていました。

ある日、オルガン教室の発表会があるとの知らせが来ました。

 

母は張り切っていました。

 

姉と私が、オルガン教室の発表会に着られるように。

姉とおそろいのワンピースを作ると。

 

 

オルガン教室の発表会の一週間前に出来上がりました。

胸に花束の刺繍がついた母の手作りの手の込んだワンピース。

母は手芸教室を開くほどの腕前です。

しかし、胸に施してある刺繍は子供心にも手の込んでいるもの

だと、容易に判断が付きます。

 

私は、困りました。

 

どうしても、オルガン発表会に出たくなかったから。

 

極度のアナゴ体質。

 

極度の緊張しい。

 

オルガン教室の発表会当日。

母の作ってくれたワンピースを着ました。

母が一生懸命、作ってくれたワンピース。

控室で姉と一緒に出番を待ちます。

 

緊張で足がぶるぶる震える私。

 

ついに泣き出してしまいました。

 

駆け寄る母と姉。

 

「どうしても嫌や…出たくない…。」

 

この時初めて母と姉は知るのです。

私がオルガン教室の発表会に出たくないことを。

 

母は多分がっかりしただろうに、何も言わずオルガン教室の

先生に具合が悪くなったと告げ、出なくても良くなりました。

姉は私がオルガン発表会出演を拒否したため、ひとりで出演

することとなり、ずるい!と言ってぶつくさ言っていました。

 

「出なくてもいいんや…。やったー!」

 

内心、物凄く嬉しかったのを今でも覚えています。

 

でも同時に、母が作ってくれたワンピースの刺繍を見て

少し悲しくなりました。

 

「お母ちゃん、一生懸命作ってくれたのにな…。」

 

私は発表会に出なくても良い安心感と同時に母に申し訳なさ

を感じました。

 

その後、オルガン教室の発表会に私が出演拒否をしたので、

姉がひとりで出演しました。

姉には申し訳ないけど、ほとんど覚えていません。

 

私は母に謝りたかったです。

 

でも、本当はそのワンピースを着れただけで満足だったのです。

 

今でも、そのワンピースは少し苦い思い出とともに蘇る、

私の「自慢の一着」です。

 

 

 

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今でも、このワンピースを見るとオルガン教室発表会の時のことを思い出し、すこし切なくなります。