おじいちゃんの大あんまき

お題「思い出の味」

私の思い出の味は、祖父の大あんまきです。

 

大好きだった祖父は、私が12歳の時に心臓発作で65歳で亡くなりました。

 

祖父は戦時中、警察官だったそうです。祖父母は終戦を迎えてから、自分たちの小さな子供二人(私の父と叔父。叔父は後に盲腸を誤診され18歳で他界。)を連れて満州から命からがら引き揚げてきたそうです。その後、祖母の実家(私の生家)で子供たちと共に暮らし始めました。

 

私の生家は商売と農業で生計を立てていました。祖父はその当時から心臓が弱く、農業を精力的にこなす祖母や、商売をしている父や母に頭が上がらないと言った感じでした。「わしは子どもんたちの子守が仕事だ。」と言ってよく私たちと遊んでくれました。生家は五右衛門風呂でした。大家族だったのでお風呂も二人ワンセットで私は祖父と一緒に入りました。近所で寺子屋(今でいう塾)の先生もやっていて、夏休みになると習字や算数や中国語(!)を教えてくれました。

 

祖父は、おやつによく大あんまきを作ってくれました。大あんまきと言っても形がきれいなものではありません。ところどころ焦げている時もあったり、ものすごくいっぱいあんこが入っている時もあったり、ほとんどあんこがない時もあったり…。それでも、ぷーんと台所から甘いいい匂いが漂ってくると小学校から帰ってきたばかりの私はランドセルを放り投げて、台所に一目散!「おじいちゃん!大あんまき作ってるの?食べたい!早く食べたい!」と、祖父の横でじーっと大あんまきが出来上がるのを見ていました。しわしわの大きい手で、祖父専用の卵焼き用の四角い使い込んだフライパンで、いつも大あんまきを作っていました。小麦粉と卵と牛乳と蜂蜜で作る大あんまきはとてもとても美味しかった...。

 

それに、今この記事を書いていてわかったことが一つあります。

 

祖父は私が帰ってくる時間に合わせて大あんまきを作ってくれていたということです。時を越えて、再び祖父の深い愛情に大きく包まれる思いです。そう、まるで祖父の作る大あんまきのあんこのように...。祖父が亡くなってから何度か自分で作ってみましたが、同じ味にはたどり着けませんでした。「このままだと、おじいちゃんの作ってくれた大あんまきの味の記憶がぬりかえられてしまう。」私は記憶の中に大切に祖父の大あんまきを取っておこうと思いました。そして、もう自分で大あんまきを作るのはやめました。

 

もう2度と食べられないけど、おじいちゃんの大あんまきを思い出すと、とてもとても幸せな気持ちになります。

 

 

 

 

 

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祖父はネオ・ロカビリーのストレイ・キャッツのドラマー、スリム・ジム・ファントムに激似!!